尻からブォーブォーと風を鳴らして
与太郎は空へと舞い上がった
空のてっ辺で何処か見てゐた
勘太郎は電線に止まった
北風がピュウ、ピュウと吹いた
鴉が、カア、カアと鳴いた
柿の木には柿の実がもうちょっとしか残ってない
里のお山の間からとほく
北岳が真っ白なお顔を出していた
捨て猫の太郎が家に入ろうとした
梁の煤けた幣ぬさがふぁさッと揺れて
太郎はそのまゝ引き返した
掘り抜きの井戸のところでばあさんが
前掛けのまへに皺くちゃな両手を結んでぼんやりとしてゐる
風も吹き止んで
おばあさんはほんたうにぼんやりしてゐる
与太郎は自分が関心すること以外のことに
関心することが出来るのだらうか
与太郎は人を笑はさうとして
また、まへの場所に戻る
倉石智證