糸車を曳くのだ

糸車を曳くのだ

曳いて曳いて、トントントン

糸車を曳くのだ

糸車を曳くのだ

曳いて曳いて、トントントン


糸電話、くるくる

障子紙のうす明かりの向かうに

糸電話をかける

稲雀が稲架はざから豆鉄砲ののやうに転がり落ちて


糸電話かける

庭先に筵を敷いて

おぼこが

赤まんまやミゾソバをおちょぼの口に手を添えて

糸電話、くるくる


たれか遊びに来ないかな

こんなにも小春で

おじいちゃんも、おばあちゃんも

けふはお家にはゐない

だあれもお家にはゐなくて

あの赤い柿の実は空に高すぎてわたしには取れない


あかまんまんをこぼす

糸電話来る来る

薄明かりの障子紙の向うに

縁側にガラス戸がガタンと揺れて

もうすぐに、

八ヶヤツの颪おろしが来るゾ


倉石智證

八ヶ(ヤツ)=八ヶ岳