久里洋二さんのFBを読んで───


むかし少女だった老女が

車椅子に乗って近づいて来る

表情を忘れたむっつりとした表情で

面影・・・


わたしが顔近くに顔を差し出すとやうやく少し笑った

彼女の皺くちゃな手の甲にわたしの手を被せる

頬笑みが彼女の顔に広がる

右手がしっかりと握りしめられていたので

一本、一本と指を解きほぐしていって上げた

手の平からは赤い小さな玉が出て来た

「好き」

と書いてあった


わたしはその小さな赤い玉を

そっと自分の上着のポケットに入れた

だれか、気が付いただらうか

美しく、才能があって、近寄りがたかった少女の

手に温もりがあって

顔は静かに笑ってゐて

秋の午後の日の核心


倉石智證