一つ落としたのに二つ拾ふ
二つ落としたのに三つ、拾ふ
そんなのありかとある嵐の後の朝に
存在を決めるのは人間の感情だ
青胡桃、一つ二つ三つ
黄くるみ、二つ三つ四つ
みんな草のなぎ倒されたあとや
道の端に、流れの岸辺に散々に転がる
ゴム長の後追いかける
踏みつければ苦い思ひもいつしか心地よくなって
だから人間って、森の生き物たちよりも不思議だと思ふ
あゝ、ここを追いかけて育ちゆく子を思ふ
あゝ、ここを追い上り行き
亡き父母を思ふ
そんな時には、鬼胡桃
おまへが一番いいのだよ
その落ちた鬼ぐるみの端に
今では野生になった茗荷茸が芽吹き
密かに白い花を秀先ほさきに付け
わたしをこ暗い森の奥に手招く
一つ落としたのに二つ拾ふ
二つ落としたのに三つ、四つ
まるで母を恋ふわたしのやうに
倉石智證