■久里洋二さん「三色太陽と赤富士」
ただいま久里洋二展から
富士には雲が湧く
もくもくもく
雲の波
波に動く
前の雲、後ろの雲
雲の間に緑が見える
緑の樹海
樹海と云ふからには海に違いない
緑の海ももくもくもく
波に動く
前の雲さんと後ろの雲さんが考えた
はて、どちらにもくもくもく
前の雲さんが動き始めるとつられて
後ろの雲さんも同じ方に動き始めた
緑の樹海は吃驚してゐる
前の雲さんと後ろの雲さんが今度は反対の方向に一緒に動き始めた
もくもくもく
すると樹海はくすりと笑ひ
風吹く波にもくもくもく
一緒になって波に踊り出した
樹海が波に笑へばるらるらるら
雲の波も交互に笑ふ
今度は前の雲さんが右に踊りはじめれば
後ろの雲さんは左に踊りはじめる
波にぷかぷか
波にじぐざぐ
腕を組んで白い脚波
白い雲さんの波がしらの
前と後ろに
樹海の緑の波に愉快に膨らんで
みんなが腕を組んで右に左に波に踊った
その間、富士山は何にもしなかった
それなのにけふの富士山は真っ赤になって
みんなの楽しげな踊りにすっかり酔ったやうに赤富士に聳えて
左手に三色の太陽を掲げる
あゝ、すべてが一つの宇宙であるならば
あの太陽にぶら下がって
『凱風快晴』
富士の高嶺を上から見てみたい
倉石智證
