古い駅舎から坂道が伸び
県道の角に「女の肩」といふ店が立ち
やうやくそれが
女の肩を持つと云ふ意味なんだと知った
店には屋根が張り出すばかりで
店の前は道に開け
正座する男の長広舌が聞こへてくる
こんなにも鄙びた村であるにもかかわらず
優雅なお帽子を被った婦人や
白いレースの手袋の女性や
お尻に派手な尻尾を付けたご夫人も
黒々とした鬢にお櫛を飾り立てた媼もゐた
どんよりと陽もくぐもった昼の日中
辺りは時が止まったかのやうになり
黒々とした影絵のやうな女性たちに
これやあれやと取り囲まれた蝶にネクタイをした男は
汗だくになって女の肩を持つと
ずーっと喋りまくってゐるのだった
倉石智證