さう思ふのはわたしだけではないだらう

この季節の葡萄の最後の房を剪りとる

鋏を仕舞ひ

疲れて、幾分か満足げな静まり返った葡萄の棚下から出て

畑の径に沿って歩き進む

白いレースの花叢が続く

モンシロチョウが飛び交い

半時もしてもまだレースの花に遊ぶ

さすがの百日草にも枯れが目立ち

うなだれたり倒れたりする間

この韮花は清楚に元気だ


さう思ふのはわたしだけではないが

下校帰りの子供たちが石垣の上の道をさんざめきながらゆく

学校の調べは

放課後のオルガンの調べだ

石けりをすれば、そちらの方に終わりゆき

日陰から出れば微かにそこからまた調べ始まる

とっても平和な気分で

誰かがそこにゐるのさへ忘れる


花韮の花のレースは清楚で

風を送るともなくモンシロチョウと戯れ

さう云へば子供たちの影が石垣に過ぎたそれへ

カタバミの花もひっそりと咲いて

秋の陽がそこへ来ているのを知る

ひと通り陽が畑の上をわたると

石垣に影が濃くなり

日はさみしく冷えて

すると、いつの間にか

あのスヒーン、スヒーンと涼やかな沁み入るやうな鳴き声が

石垣伝いに聞こへ

だれかれとなく声を静めて耳を澄ます


あゝ、不思議だ

ウマオイの髭のそよろに

それへ、

たしかに秋は静かに降り来る


倉石智證