「亭主の好きな赤烏帽子」

鯊の眼に涕

それは嬉しいのか、悲しいのではなく

青い天球を目ん玉に映して


潮が寄せてくると、潮の上に出る

砂や、杭の上にちょこなんと

眼はくるくると

挙措はとても俊敏でやさしいものだった


あらん限りの知恵を使って

この地球物のたった一個の生命体は

誰に云はれるのでもなく

ひたすら、

次の一手を考へてゐる


倉石智證

トビハゼ───

陸上生活に適応した魚で

潮が満ちてくると水から逃れるように岸方向に移動し

杭や石の上に上がる。