写真はシリア北東部で13年6月撮影。
go ahead !
しばらくは鼠のやうに疾しる
ぼくはこのくらいのとき肥桶を担いだ
だが天秤棒で兄貴と一緒にだった
僕らはお天道さんの下でよろけて肥桶を被ったりしたが
それは二人して笑へるていどだった
鉈や鋸や鶴嘴や鑿や金槌を持ったことはあるが
ついぞ鉄砲は持ったことはなかった
近所に冬の雪のシーズンになると雀や鴨を撃つ人がゐたが
あれは空気銃だ
鉛の弾は当たるとひしゃげる
雀はよく焼けると骨までパリパリして旨い
go ahead !
しかし泣くわけにはいかない
伯父さんが殺られ
とーさんが殺られ
兄さんも持って行かれた
学校なんか行くどころじゃない
おい、そっちじゃない
と云われてももうどっちか分からない
友達や学校どころじゃないんだ
殺り方は分かってゐるから
云われた方角に走る
弾寞のなかにしゃがみ込むと
耳の中で鳴いていた虫がしーんと静まりかへる
世界中が静まりかへり眼を固くつむってゐると背後から
go ahead ! と大声がする
僕はもう考えなしに野鼠のやうにまた走り出す
倉石智證
