夜が鳥になって鵺ぬえとなる

夜に大きく羽ばたいて羽が鴉色に輝き息づいて夜に沈む

空の上の方は真っ黒になって暗ずみ

しかし、村々の屋根に懸かる辺りは青く、ペルシアンに

でも、すぐにやがて世界中が夜に深く捉えられる

大きく暗ずむ闇がたちまち宙に広がって

地の下では小さく螻蛄おけらがチチチと鳴く


たれが鵺を夜に放ったのか

頭は猿、胴は狸、尾は蛇、手足は虎、

声はトラツグミに似るという

物の怪

それは日本では頼政以降見たものはなく

声は時たま人の声の中に幻のやうに聞くと云ふが

それでも結局、それは人々の疑いやうもない真実ではなく

人のとらへどころのない心の中に棲むものと云ふことになった

多分だから鵺には本来善悪はなく

鵺に関してはこのやうに一筋縄ではいかない


倉石智證