蜻蛉、茅の輪を潜りゆく
ヨイヤサ、田に稲穂の実る、たわゝに
ヨイヤサ、蜻蛉飛ぶ群れなすうへを
ヨイヤサ、山下る神、陽に白く、風を為す
ヨイヤサ、奴に踊る、左に二ツ
揃いの法被、右に二ツ
嬉しくて、たたらに踏んで
祭り笛、空の高さよ
酔芙蓉裏の畑に
ヨイヤサ、秘す恋の色にあらはれ
ヨイヤサ、逢瀬とて畑の影に
ヨイヤサ、手招きす、揺れる人影
ヨイヤサ、秋蛍、清水流れて
草陰に点す灯影の
魂抜けて、セギに手つなぎ
村越へる恋の瀬戸際
風の盆、風に送りて
ヨイヤサ、外とつ国の胡弓の調べ
ヨイヤサ、右の手を左に上げて
ヨイヤサ、指先の闇の深さよ
ヨイヤサ、裾さばき笠の深さに
ヨイヤサ、この調べ物憂くながく
ヨイヤサ、繰り返す街ゆく調べ
男衆おとこしの腰の深さよ
夕闇に田に流れ出て
仄白く人の影ゆく
ヨイヤサ、恋の標しるべの
風の盆唄
倉石智證
抑制され、洗練され、謡ひ踊り継がれてきた。
これも神(かむ)流しだ。
9月、もう秋がそこにやって来ている。