また、生まれたってよ

にわかにまわりは色めき立つ

ばあさんは腕まくりして出掛けて行った

喜び勇んで出かけていったよ

とじいさんは云ふ


子供が遊んでゐる

空は真っ青で

木々は真緑に

蝉の声がうるさいほどだ

頭の天頂から汗びっしょりになって

おうよ、と頭に触れば

水を被ったみたいで、熱い

確かにこのちんこい頭の中で

何かが盛んに爆発してゐる


もう帰ろうねと云ふと

もっとここにゐたい、て云ふ

云いながらboyはもう眠りはじめる

立ったまま、体が急に重たくなるのだ

足元の草いきれが

小川に群れるメダカが

ザリガニがこんなに前脚を広げて

あゝ、眠ったまま笑ってゐるよ


また生まれたってよ

やるもんだねへ

ばあさんはやる気満々で出掛けって行ったよ

けふは帰ってこないだろうね

じいさんは酒をちびちび飲んで

膝も腰も首も、あっちこっち痛くなったなぁ

と、冷蔵庫から独りで酒を出して

これ幸いにとうまさうにちびり、ちびりと


かうやって小さな命が次々にひり出されるたびに

じいさんも、ばあさんだって

川を遡上する鮭のやうに身がそろそろとぼろぼろになって

また生まれたよって

でもとにかく嬉しくなって───

見上げると青い葉っぱに

蝉の抜け殻が重なってぶら下がってゐた


倉石智證

私事───

甥っ子に年子で男の子がまれた。

ねーさんはいきりたって出掛けて行って、今夜も、

多分、明日も帰って来ない。

じーさん(兄)はこれ幸いにと酒を飲み始める。

うれしいことは、うれしいのだ。

ご縁のない方には大変申し訳ないことだが。