「亭主の好きな赤烏帽子」

■久里洋二さん「本を読む」

(絵は語る)読みたい本が一杯ある。

本屋に行っても、本が一杯あり過ぎて、目が散って、探しようがない。

買うつもり本ではなくて、別の買ってしまう。

あなたは何を読むのでせうか

そのページには物語

窓の外には雲浮かび

ネコはお外にお散歩に

広いお部屋にただ一人

窓辺に椅子を引き寄せて

青の陶磁にチューリップ

高いヒールの赤い靴

フェルトの帽子着飾って

待つこともなく本を読む

訪れる人誰もなく

ごはんですよと呼びかける

声さへ部屋には届かない


ページには物語は書かれてなかった

文字一つなく真っ白な紙が綴じられている

少女がご本から顔を上げた時

はじめて自分に顔がないことを覚えた

お部屋は少女の物語りごとお空に浮かんでいた


倉石智證