夏ごろも着てはや

秋衣着てはや

虫の音のはや


こがね咲く稲穂の道を

蜘蛛の巣を打ち払いて

山の麓のカラスウリを

熟れてはや、弾けて


鎌を背に山に入る

鉈を手に谷に下りる

出水の痕の大岩の朝露に濡れて

大木の懸かりぬ

山の端の頂よりとほく、朝陽射す

抉られし崖の縁の土色の

代赭に水気を帯びて湿り

落ちかかる蔓の山ぶどうの実の黒く、青く


ひとり来て、独り寂しむ杣人の

秋衣の裾のしとど露に濡れて

佇めば

水音のおさまりゆき

静けさに、

微かに、幽かに

風立ちぬ


ミズヒキソウに

陽衣のかかり、下草に明るみて

ミゾソバも

佇立せる杣人に

山の入口の村人に

風立ちぬ、

いざ生きめやもと


倉石智證