八月の日記
八月は日記を付けむ
西瓜の匂ひ
青空にランニングシャツ
白い雲に捕虫網
お昼寝
青臭いトマト
水辺に、そして高い山の峰に
蝉の鳴き声が遠ざかる
夜は打ち上げ花火
門に麦藁むぎわらを燃やす
お盆ござれと
すると
幾千、幾万のものたちがかへって来る
はげしく鉄の焼ける臭ひが
無数の軍靴の足音が
どこかで断末魔の声が
水がざわりと蠢く気配が
白くほほ笑んで手を上げて
知らぬ気に通り過ぎようとする
海ゆかば
八月は、水漬づく屍かばねの
山ゆかば
八月は、草生むす屍の
八月の魂たまの逝くへの
ゆくりなく
麦藁むぎわらのお盆かへれと
薄き煙りに白き装束の仄かに
大君の辺へにこそ死なめ
かへりみはせじ、
と・・・
倉石智證