僕らはいくつかの困難に出会いながら
街区を行進しなければならない
むろんそれは平和に関するものだ
しかし、そのうちに1本の歯が抜けた
ひどく殴られたからだ
ものごとの正当性を必ずしも唱へるわけではないが
電信柱のスズメが飛び立つ
ザクロにたかる蜂
催涙ガスは言葉や名前を丸ごと閉じ込めるものだ
嫌だと云ふのだ
電信柱がこれ以上揺れて
ザクロもすぐに破裂する
歴史はあからさまに真理から遠ざかりつつあるのか
まるきりの性善説によれば
微細な変化の兆しが
偶然の積み重なりによって
リトマスの色をある日突然に変へ
人々の眼差しを昏いものにする
熱狂するか
口をつぐみ、灰色に押し黙るばかりになる
物事はその間にも刻々と進み
知らない間に空をヘリコプターが旋回しはじめ
鋼鉄の塊のやうな船が
ぽっかりと口を開ける
どちらかが常に正しい
といふのはつらい物事の選択だ
スズメがそのことを伝へる
果肉が破れんばかりのザクロにたかる蜂も
さう云へばスフィンクスは何千年もの間一言も口を利かず
ただ謎を掛けるばかりで
ナイルの河はただ滔々と流れている
その間に石はやたらにピラミッドに乾き
墓地は黴臭いにおいを発する
後ろを知らなければ前へとは進めない
だからパピルスは王の恋愛をその放恣を暴露した
それでよかったのか
歴史、人口、GDP、税
やすやすと国家は逃れてゆく
大勢の人がいつもそれに従ふ
軽快な笑い声さへ聞こえる
それでも時々はその顔が目の前を横切る
あなたは神ですか、と問うと
それはあなた方が云ったことです
とますます暗くその横顔さえ見えずに
深い原初の存在の闇に突き落とすのだ
世俗のことや利子のことを云ふのだ
信仰しつつ姦淫を犯す
四六時中マネーの油のことは頭の隅から消え去らない
もはや、全部を神に捧げることは
ムツカシクナッタ
電信柱は傾いている
ザクロは間違いなくもう少しで破裂するだらう
スズメも蜂も空に飛びあがりそのことを伝えるだらう
遊弋する鋼鉄の船ばかりではなく
チタンでできた黒い無人の飛行機も
旋回するユニクロやマクドナルド
あの国家や文明や儲けさへも、
いまや神の成れの果て、だということにうすうす気づく
はじめに言葉ありき、で
言葉は神とともにあったのだ
神が常に恣意し
言葉が区切り、思いは無数に散らばっていったかと思うと
収束してまたある形になった
会社や数字になったりもした
利潤は現実に生み出された
ところであの人たちは四六時中神の祈りとともにあれ
と命じる
利子は禁じ
利得に深く腕を突っ込むことを禁忌する
よくわからないことだが、女子の顔をヴェールで隠す
夜は星空やお月様と共に眠りに付き
夜のコンビニの蛍光色を好まない
朝はしたがって鳥の声と共に起きるのだ
決して二日酔いなどはありようがなかった
夜をいたずらに騒がしてはならないのだ
街区をこのやうに行進してゆくことは困難なことだ
手持無沙汰ではないが両手には何もない
コーランは部屋に置いてきたままだし
でも祈りは手と胸に四六時中あり
その手が今は石を掴む
それは怒りではなく悲しみだ
石が手に冷たく固いものだと知った
すぐにスフィンクスが思い出される
なぞはまだずっと出されたままだ
いかにこの困難を解決するかは無明の杳暗の中にある
しかし、
ナイルはイスラムよりももっとはるか昔に流れ出て流れ下り
ピラミッドはその神よりずっと前に石に積み上げられた
無数の神々の列が
烈々とつながり下ってくる
それがふと途切れた時、砂漠に血が沁みて
王宮や砦は血で溢れた
逃げ惑う民衆や兵士の上に神の哄笑が続く
私に常に従へと
そして、それが今のものとなるとは――――
やっと人々はそれに気づくのである
神が元凶だったのだ
偉大なもの、歴史的なもの、
謎めいてしかも存在し続けるもの
それらをもっと身近に引き寄せて
と、ナイルを渡るスズメも蜂もそのことを告げる
神はしばらく遠ざかり
個々の家のなかに閉じこもり
せいぜいが地域の集会にであり
国家に国政に顔を出してはならない
過去現在未来を結ぶ線があるはずだ
正しいことを正しく行ふためには
間違ったことを間違った風に行はないためにも
やはり英知を出口からに集めなければならない
出口とは何か
ナイルの肥沃だ
雲が湧き、雨を降らせ
谷を渡り、谷に流れ
多くの流滴が集まって奔流をなし
やがて、砂漠に集まって大きな豊かな流れとなった
僕らも、あなた方も生まれるずっと前に、
確かにずっと
だから、神を天に抱くならば
ただ一点ためらふこともなく、
疑いもなく、ただナイルを信じればいいのだ
そこで、と云ふ
あの、神を信じる人も神を信じない人も、
と云ふ
麦が雷雨に打たれている時に
ああ、少しでもそっぽを向いてはならないのだ
少なくとも、神を持ち出してはならない
僕らの定常化、と呼ばれている社会で
コンビニを持ち出しても仕方がないように
必ずしも正義がコンビニにあるわけではなく
ああ、スフィンクスの地勢では
生まれゐ出る、すべての知性に
それらの翳がどうしようもなくそれぞれのすべてに表れる
ああ、しかし、それこそが、
悠久のあなた方の大義、誇りではないのか
パピルスの伝へはとほくなったかもしれない
しかし、それらは今もやはり現在であり続ける
スズメも蜂もナイルを渡る
ザクロは熟れてこの国が相変わらず豊かであることを告げる
世俗はいつの世でも神を信じつつ姦淫を行い
共産主義は、にもかかはらず
利息から片時と云へず心離れる時はない
ああ、大ナイルよと、スフィンクスは問いかける
ワニは嗤ひ
水中に反転して
アクア
水に深く潜り
眼はしかし年老いて朦朧として
口端に出るあぶく以外は声にならず
くぐもる限りは言葉はずっと交わされ得ない
私たちの行進は・・・
倉石智證
文明は方法論だ。
文化は心や習慣、歴史的時間の中に在る。
とくに死に対する態度はその民族や文化の基盤を為す。
アラブが持つ、米国を先進とするキリスト教文明に対する疑義、
アラブはどこかで西洋に対する不審がある。
結局、そのwayが気に入らない。
ところで、時間軸の中で歴史は必然的に世界に都市化を進め、
歴史教科書ではないが、“都市の空気は自由にする”。
革新、リベラルが生まれて来る所以である。
世俗は世界の要素を次第に均等化してゆくのだ。
しかし、アラブは根が深い。
ユダヤ人のディアスポラが始まった西暦直後から、
パリサイ人(パレスチナ)とシオンの確執は始まっていたのかもしれない。
そこへ、西洋十字軍が割り込んで来る。
イスラムはときにウィーン近くまで攻め入ったものだが、
イベリア半島ではレコンキスタによって、大陸から追い落とされた。
1900少し前から、世界中からパリサイ人の地にユダヤ人が集まり、
入植し始めた。
第1次大戦(「アラビアのロレンス」参照)に於ける、
あの西洋の“二枚舌外交”、
悪名高き「サイクス・ピコ条約」と「バルフォア宣言」が、
決定的にこの中東の地に不安の弧をもたらした。
西洋資本主義は、たしかにマルクスが云うやうに、
歴史的過程において自己振動を起こし、
世界における均衡ある分配(食料、エネルギー、資源)
を不可能にした。
ムスリム同胞団はガザを助ける。
米国はエジプトとイスラエルに軍事支援をしている。
サウジなどはエジプト政権にマネーを提供、
しかし、シーア派イランのロウハニ師は今度はどう動くのか。
私見───。
悠久の大義を持ち出すのなら、
ぼくは明治維新において、そののちの大戦をはさんでの混乱はあったにせよ、
天皇を持ち出したのは賢明だと思ふ。
Egyptには悠久の大ナイルがある。
人々は、特に為政者たちは
神を信じる人も、信じない人も、信じ難い人も、
今はこの悠久の大義の元にベクトルして、
万機公論、後、しかるべきテクノクラートを諸所に配置し、
トルコのアタチュルクのやうに建国にまい進すればいいのだ。