「亭主の好きな赤烏帽子」

浅草岳のお山の上には

なつかしいヒメサユリが咲いていました

木道は残雪の重みで傾いでいますが

人と人が出会うと

やあ、クールベさんこんにちは

とばかりに

見ず知らずの人たちが

お互いの所在や元気を尋ね合ったり報告し合ったりするのです

笑顔が咲笑割れて一瞬の雲の間から田子倉湖が

鬼面の巌は相変わらず厳しくそそり立ち

天上は鶯の声でいっぱいになります


「亭主の好きな赤烏帽子」

池塘の周りにははや、ワタスゲが

あなたもきっとご存知ですよね

この奴たちが草叢に突き立てる

白い白い風になびくちいさな綿毛は

けさも地表から湧き立つ冷たい霧のご飯を頂いて

少し青ざめたやうにこちらを向いてほほ笑みかけます

あゝ、そればかりか抹茶アイスを

(妻は残雪と萌えだす新緑の斑模様をさう云ふのですが)

少し下ったところに思いがけずシラネアオイも

たしかにあのうす紫の花ひらをすこし俯け

やぶの下に

多くの人たちが賑やかに通り過ぎてゆくのに

むろん、ほらあそこに、とおしへて差し上げましたよ


「亭主の好きな赤烏帽子」

ネズモチを過ぎ

しばし見晴らしにさよならをしてサクラソネにむかふ

下山の途中、

通り雨にあいましたが、

例のところにはサンカヨウの真っ白な花も迎えてくれる

春ゼミがまた湧き立つように鳴き出して、

さう云へば耳にしんしんと鳴き落ちる春ゼミの声に

デスクのまへに仕残した計算式のわずかなことを思い出したことです


「亭主の好きな赤烏帽子」

浅草岳へは例の雪でストップしてしまった所

(上の方のちっちゃい橋のところ)までは車で行けますよ。
8時少し前に到着しましたが、路上はもう駐車が満杯状態。
あやうく留められました。
頂上付近の残雪はほぼ例年並みと云ったところか。
ヒメサユリは来週までもつのかな・・・
ウメバチ、オウレン、ツバメオモト、マイヅルソウ
イワカガミ、アカモノ、ドウダン、
コバイケソウが盛りです。
珍しいところではカタクリが実を付けていました。
躑躅はもうないですね。
真っ白なタムシバの花たちももう散った後です。


「亭主の好きな赤烏帽子」

登り来し妻とし今年ヒメサユリ

(13,6/29曇り、少し晴れ間、通り雨)


倉石智證