行を離れた蛍なら

胸に焦がれるわが思ひ

ページに泊まるその日から

に明るきを灯しけり


蚊帳に逃がして遊びける

小さきころのたなごころ

指の隙間の窓からは

とほき世間も見えにけり


ほう、ほう、ほたる来い

こっちの水は甘いぞ

古き雁皮紙に薄蒼きインクで記す

紙魚の蠢きて、囁く

今に、

ほうほう、蛍こう


甘きにけり、甘きにけり

夜目に輝くその水に

こっちの水と囁けり

古きページに来て泊まる

ほうほう蛍は金の鈴

わが思ひをば点しけり


倉石智證