■久里洋二さん「紫陽花と蝶々」
(絵は語る)紫陽花は、本当に美しい。
梅雨の申し子とはなれり
あぢさゐ
心もとなき蝸牛の宿りとはなれり
あぢさゐ
地に湧き出る虹色とはなれり
あぢさゐ、
神楽坂にあれば
色街の色の
胸騒ぎにぞ
云はれなき噂に
江戸の仕草に傘傾けて
人目なき夕暮れを
足音を忍ばせて
われに急ぐ
あはれあはれ
ぼんぼりの足元に細道へと続き
恋の逢瀬といふ
梅雨のまうし子といふ
紫陽花
陽が射せばつと虹色の立ちて
色のあわいから蝶が次へと紫陽花色に飛び立ち
色を占ふ・・・こころをば
わがこころは紫陽花の花
桃色に咲く日はあれど
うすむらさきの思ひ出ばかりはせんなくて
はげしい心変わりを
倉石智證
1925萩原朔太郎『純情小曲集』
「こころ」
こころをばなににたとへん.
こころはあぢさゐの花.
ももいろに咲く日はあれど.
うすむらさきの思ひ出ばかりはせんなくて
