pourquoi ?

なぜにみどりなの

pourquoi ?

薔薇の花が紅い

イルカが水に泳ぐ

pourquoiの一言で空に跳び上がる

蝸牛がゆく

時計に巻き巻きして、

プックワ、と空を見上げる


薔薇の木に薔薇の花咲く

不思議はなけれど

水に棲むイルカの遊び

蝸牛の長い旅路は

蹴(く)ゑさせてん 踏み破(わ)らせてん───

かたつぶりの涙


プックワとドルスは甘いお菓子をねだるがごとく

プックワとマルセリーノは神にものを尋ねるがごとく

陽に当たる麦藁の清潔

アガペー、あゝ、神の恩寵がそこに

初めに在ったのは神さまの思ひだった


プックワと高層ビルの真上で

プックワとものすごい音を立てて走る地下鉄の中で

けふはタブレットを覗き

地球の裏側から無数の声のないpourquoi ?


倉石智證

薔薇ノ木ニ

/薔薇ノ花咲ク。

/ナニゴトノ不思議ナケレド。


薔薇ノ花。

/ナニゴトノ不思議ナケレド。

/照リ極マレバ木ヨリコボルル。

/光リコボルル。

『白金ノ独楽(はっきんのこま)』より

1914年(大正3年) 白秋29歳の頃の作品集。


「アガペー」

ギリシア哲学では、欲求と愛が未分化で曖昧。

神は無限の愛(アガペー)において人間を愛しているのであり、

神が人間を愛することで、神は何かの利益を得る訳ではないので、

「無償の愛」とされる。