たとへば、空があるとする

たとへば、花があるとする

ゑうなきものを・・・

空は、

花を支えきれない

牡丹散って、あゝ、

うち重なりぬ、二三片


千曲川べり

旅する人の

裾を、あらぬ川風があらふ

萱草や、韮や、野蒜の季節は過ぎつつ

あとは青の緑にまかせるばかりだ

杯を置いて、見まがふ花の


ほーたん、ほーたんと呼びかける

雪囲いからよく育ったものだ

薄い薄い花片が風にそよぐ

容、容

さうして空をゐるる、

風をいっぱいにゐるる

あゝ、そのやうにして

空はもう、

花を支えきれないでゐる


倉石智證