いるか、ゐないか

居ないか、いるか

春になれば

少し水温むころになれば

イルカも海に泳ぎだす

なんにも考えなくたって

たぶん、そのころには

きっとイルカだって子供に寄り添って

一緒に海に戯れてゐる


誇らしげに連れて歩くのだ

大人の社交のやうに

公園にデビューし

いるか、ゐないか

居ないか、いるか


春になれば、人間も泳ぎだす

うす青い靄の中を

すべてがいよいよ芽吹きを迎えた中を

空気をどよませて

子供を自転車の後ろに乗せて

元気よく、弾んで

シートから落っこちそうに跳ねあがっても

委細構わず母子で笑って

角ぐみはじめる公園を横切って


あゝ、こんな日には

───空と、海の青さよ

と思ふ

角ぐみて、角ぐむ

さうして、すべてが安心するのだ


倉石智證


「亭主の好きな赤烏帽子」

■これは海のギャング、シャチの親子。

シャツの親子だって、ほれこの通り。