ミューに舟を出す

ミューに舟を出す、無菌室から

真っ白なベールを上げて

池に漕ぎだす


池は春

池をめぐりて

岸辺には今が盛りと水仙の黄なる花叢が咲き飾り

小鳥たちが啼き出だすと

ちちち、と

ミューも不思議声を出してそれに揃へる

池をめぐりて黄なる水仙の花は

天からふり降りてくる金管楽器のその音色で

ミューは我を忘れて両手を出す


櫓は落ちて静まり

舟の舳ともは少しの風にも惑う

ぐったりと船べりから腕を投げ出して

お父さん───

わたしはここだと何度も呼びかけたのに

天から降る金管楽器の音階の

水仙の花は池をめぐりて

ミューの命は幼子を残したまま

天に召された


倉石智證