或るときは

ヨーダのやうになって地球の端っこに腰をおろす

曲がった指先で指をさし

指先に唾をさすと

翔んでゆく星を、ぺろんと捉まへて食べる

黄色いお星さまは★形になって

皺深い喉を下り

それでそこいらはそのまんま

ぼーッと灯るんでゐる


ほんたうに一人ぽっちになって

地球の端っこにそんな突き出たところに

ボーっと座ってゐると

いくつものお星さんが目の前を通り過ぎていって

曲がった指先で指をさし

唾をつけると

ついまたぺろんと唇にいれてしまふ


人っ子一人、

だぁれも話しかけてこない

『20億光年の孤独』って・・・

ぼくは今ちゃうどその本の真上に腰をおろしてゐる


倉石智證

『二十億光年の孤独』(創元社、1952年

谷川俊太郎(20歳)


人類は小さな球の上で

眠り起きそして働き

ときどき火星に仲間を欲しがったりする


火星人は小さな球の上で

何をしてるか 僕は知らない

(或はネリリし キルルし ハララしているか)

しかしときどき地球に仲間を欲しがったりする

それはまったくたしかなことだ


万有引力とは

ひき合う孤独の力である


宇宙はひずんでいる

それ故みんなはもとめ合う


宇宙はどんどん膨んでゆく

それ故みんなは不安である


二十億光年の孤独に

僕は思わずくしゃみをした


わずか二十歳のころの作品である。

朝鮮戦争の真っ盛りのころのことである。