かってかうして腕を組んで歩いた

そこに

あなたの腕の痕が生なまとあります

いまだその温もりも

陰翳まで残ってゐるやうです


金の金輪かなわではなく

古い青色に錆びた緑青ろくしょうの金輪が

さみしい私の腕をきりきりと締め付け

それで余計思ひ出が激しくなるのです


あなたは私の腕に腕をからませて

わたしをぐいぐい曳いてゆく

都市の真中

海辺のほとり

城壁の石垣の上などです


呼び出しがかかって

突然戦争へ連れてゆかれた

鋼鉄のデッキの上で大きく手を振るが

その腕はすでに私のもではない

波が白く泡を噛んで


ほらここに

かってかうして腕を組んで歩いた

そこに

あなたの腕の痕が生なまとあります

やけどの痕のやうに長い不在がそのままに

そこに

をじっと凝らす


もう、きっと、いらっしゃらないんですね

すっぱりと諦めて

わたしは私の腕に白い包帯をぐるぐる巻いて

わたしは寡婦になることを決めた

わたしはわたしの腕をあなたにあげる

誰が何と言おうと

あなたの匂いが残ったこの腕を形見として

私の愛の形に

分かってくださいますね


倉石智證

公然と再軍備を述べる国会議員。

戦争傾斜へとあの国もこの国も急いでいるやうな気配が。