地を傷つけるな
荒々しくも
膝で這い
肘で穿ち
指で刻印する
この乾いた大地で
人々は蠢く
あの大地の向こうに都市と云ふ大蜃気楼が浮かび
今も陽炎に激しく揺らめく
欲してゐるのだ
もっとおくれと
それが無くてはけふも暮らせない
煌めくネオンライト
夜通しの喧騒
火鍋が厨房に踊る
腹いっぱい食べて呑んで
一晩眠ればまた地下鉄に乗って働きに行く
何千㌔と離れて、しかし
こちらでは、砂漠のネズミが動き出す
ほんの出稼ぎ気分で来たわけではないが
いきなり鈍色の銃口を突き付けられて
集まれ、とひどい声で
誰が生きて、誰が死ぬのか
そんなことは知らない
喉が渇き、舌が痙攣する
腰に爆薬を巻き付けられたからって
助けを求めるわけにはいかない
間延びした、切羽詰まったようにも
そんな時間が耳の中で蛞蝓のように蠕動し
何かがすべて、玉突きのやうに迫って来る
膝で這い
肘で穿ち
指の爪で砂漠の大地をひっ掻いて作った
巨大プラント
正義のためだ、なんていったためしはないが
これはこれで人間の欲望の都市だ
地球の殻の奥深くの
眠ってゐる火の神をおびき出す
火の尻尾は走り、海のほとりのアルジェに着いた
青い海の向かうにフランスと云ふ都市が
陽炎に浮かぶ
必死に生きる
必死に働く
遠い母国で家族が待ってゐる
爆薬のネックレスが首に揺れる
なけなしの命がちぢこまり
ほんたうに生きた心地もしない
後ろでは破裂したが、私は助かった
だが、すべては運命の偶然に過ぎなかった
あの連中でさへ
まかり間違って、しかし
砂漠のネズミ
身代金をもらう前に
ダーン、ダーンと、
殺られた・・・
法の支配が守られた・・・
倉石智證
