メロンパンの不思議
あゝ、尤もだ
堆うずたかく積み上げて
王様のやうな気分になって食べたい
メロンパンの真実を誰も知らないから
港の見える丘
バスケットに入れてパラソルの下で売る
メロンパンはいらんかね
ここら辺では戦争もなく
陽もあったかで
赤ん坊は良く眠ってゐる
だからお母さん同士は長い午後のお話と
口をほらあんなに開けて笑うが
船の汽笛と
どうかすると大きな白い帆が港から出てゆくのを見たりする
メロンパンはいらんかね
メロンパンの謎を解き明かしたものはゐないから
さてそこで東洋の王子様
蛇の使いのパンの笛を吹き鳴らし
いつかはでっぷりとして鷹揚な王様になるのだが
若い奥さまたちを相手に
身振り手振りで南の国のお話をする
波の波頭がきらきらすれば
王子様の物語もきらきらする
青い不思議な目を見つめれば
奥さまたちも昼の日中についよろめく
でも、なぜ
あんパンやクリームパンではないのか
そこのところがさっぱり分からない
汽笛がボウと、鳴ってゐる
メロンパンはいらんかね
メロンパンはいらんかね
倉石智證