硬く腕を取り
小鳥のやうに耳朶をつひばむ
小声で愛を伝へ
素早く
あゝ、恋が叶ひますに
あゝ、それにしてもシルエット
夜毎日ごとに、重なり合ふ
胸の高鳴り
ゆくへ知らず流れやる時の
何度となく出掛けやうとするが
まに、まに
ヴェルベット、
ワインレッドの確かに
耳元に囁く種々の他愛もなく
それだからこそ宝物のやうに時は
過ぎゆく
列車は無為に長く
駅のプラットホームに休んだ
スティションにいつの間にか階石は擦り減った
列車の右の青のボタンを押してください、と云ふ
立川を出るとすぐに銀色の薄の穂がなびいた
男の子も女の子も
はしゃいでゐるうちに眠ってしまうのだった
彼女の淡い栗色の髪の毛が
男の子の顎の下に入るといふ具合に
重なり合ふシルエット
朝の光りに彼女の頬の産毛が金色に光る
シルエット
シルエット
ふたりはいったいどこまで行ってしまふのだらう
大きなお世話かもしれないが、もう奥多摩に着いた
窓外に真っ赤に紅葉が焔へたった
倉石智證