ちゃっかりは、うっかりのうへに乗って

うっかりはついうっかりとそれを忘れた

どうも重いなとは少しは考えた


ちゃっかりは絢爛と指揮棒を振る

御嶽では雨の中を馬が売られて行く

頑張れよと拳を振って泣く

誰一人として休んでいる者などいない

谷底の紅葉は冴え冴えと赤く染まって

畑の蕪かぶらは土の中でホッと息をつく


仔馬は売られていったが

次の日から暮らしは何事もなかったかのやうに明ける

親馬もゐななく

朝陽に白く全身から湯気が立ち

「木曽のなぁあ、なかのりさぁぁん、・・・」


ちゃっかりさんは壮大に指揮棒を振るふ

うっかりさんはついそれを忘れた

ぬさは母屋にも厩舎にもあり

昔ははあ、馬と一緒に寝たもんさ

木曽の御嶽山のすそ野は広く長く

大地は盤石だ

うっかりさんはそれを忘れていたが

ちゃっかりさんは少しもそれを忘れたことはなかった


うっかりさんもちゃっかりさんも同一であってもいいし、

ちゃっかりさんもうっかりさんも、なかのりさんだった。


倉石智證

木曽のナァー なかのりさん

木曽のおんたけ ナンチャラホーイ

夏でも寒い ヨイヨイヨイ


あわしょナァー なかのりさん

袷やりたや ナンチャラホーイ

足袋たびょそえて ヨイヨイヨイ


心ナァー なかのりさん

心細いよ ナンチャラホーイ

木曽路の旅は ヨイヨイヨイ


笠にナァー なかのりさん

笠に木の葉が ナンチャラホーイ

舞いかかる ヨイヨイヨイ


■室町時代の『閑吟集』(1518成立)に

「七月がおじゃれば木曽おどりはじめて、

振りようおどろうよ、とかくおどらにゃ気がうかぬ」とあり、

木曽踊りは古くから都にまで知られていたという。