あゝ、秋になったといふのに
畑のはからひといふものがある
あれほどの夏のモノではないが
すでに鎮もりて
しばしとっくに忘れていたものを
座敷には見慣れないものがある
「おじいちゃん、これなんだか分かる」
とは云うものの
おじいちゃんはくびをふるばかり
ちりちりとした緑の細かい葉っぱの間に
たくさんの赤い小さな実をつけて
赤いビーズの眼のやうになって
座敷の隅に活けられた
細い枝が、さらに細く細く枝分かれして、
最後はちりちりの細かい葉になって
まるで緑色した花火のやうに広がって
赤いビーズを眼のやうに散らす
朝に畑にゆくと
畑は秋の寒い露に覆われ
アスパラガスの細かい葉っぱは
霜をふったかのやうに白く露を帯びて
あゝ、と妻は云ふ
採りわすれてそのまゝになっていたものを
今では腰のあたりまでに育ち
畑の土に葉叢を広げる
おじいちゃんこれなんだ分かる
わかからない
健康チェアでぬくぬくしている
めをつむり、うつらと
棄てられた畑のね
端っこのね
すっかり忘れていたんだけどね
採り忘れてね
アスパラの
ほうら、こんなに大きくなって
赤いめゝ、いっぱい付けて
じいさんは眠っているのか
畑のはからひといふモノが在って
お天気のいゝ朝の
アスパラガスの畳のうへまで緑の葉叢の
座敷も、
おじいちゃんも静かだ
倉石智證