心身ともにガタが来た老ピノッキオ

自慢の鼻もすり減って

長年の飲酒が祟ったのか鼻の頭もどうやら赤い

膝がしらも肘も、首の付け根もぎしぎし云ふ

眼はさらに空洞になってしまった


時にガラクタと間違えられて物置に放られて

長いこと忘れ去られるのだ

あるべき姿とは

自分の欲望をまったき理性の下に従属させる

若い頃はそうさな、花に蝶に、もてたものさ

大きな魚の腹に呑み込まれる

鯨の腹の中でランプを灯し

ヨナの真似ごとをした


ところがどうだ

地上に再び出ると

待ち受けていたのは豊満なおっぱいだ

老練で狡猾なばあさんどもが私を唆す

呑めや歌えの大騒ぎになって

理性の最後のかけらもどこかへ消えてなくなってしまった

なにしろ楽しい

テーブルの上と云はず下と云はず

まさぐり触れて

最後にはピンク色したプディングに顔を突っ込む

鼻が蠢くって、くすぐったい

今だから白状するが

あれはどう考えたってオチンチンだ


夜になると神の大声が聞こえる

ピノッキオ

囁くやうに、

舎利子 色不異空 空不異色

色ならず、空ならず・・・

神の意思に従へ・・・


夜がこんなに深く思へたことはなかった

天井からするすると降りて来たなにかが

私の首筋を摑まへると

ぽーんと夜の片隅に追いやる

梁高く、屋根のうへの真闇のずっとうへのきらきら星

かうして物置の奥深くでひとり考へると

あゝ、この齢になると多くのものごとに後悔しはじめる

木は木なんだと白状する


倉石智證

『ピノッキオの冒険』(伊: Le Avventure di Pinocchio)は、

イタリアの作家・カルロ・ コッローディの児童文学作品、社会風刺小説。

1883年に最初の本が出版された。