長い梯子をかけて
植木屋さんは気持ちよささうだ
チョッキンチョッキンチョッキンな
丸い紡錘の緑がいくつも成女学園のクリーム色の塀沿いに並ぶ
角出せ槍出せ頭出せ
窓があいて女の子が頭を出して手を振る
手を振られたってなぁ
長い柄の蟹さんのやうな鋏ばかりではなく
最近はダイナモのぶぅーんという音
軽快に徒長枝とちょうしを刈り込んでゆく
おいしさうな緑の風がファーっと漂ってくる
若い職人さんの笑顔がいい
てきぱきと彳亍てきちょくと親方の指図に
まあ、もう任せきりでもいいんだ
梯子の上で、職人のあの袋のやうなズボンがふぁさ、ふぁさっと翻り
けふは秋晴れなもんだから
その袋のズボンの白さが気持ちいい
しかし、窓から頭を出して手を振られたってなぁ
槿むくげがいっぽんしゅるんと枝を伸ばし
軒近くに一つだけ耀かがやかに花を付けてゐる
遠目にも黄色い蕊が見え
どうするんだろ、と思って見ていたら
吹き来る風にふらーっと揺れた
陽に灼けた親方の顔が笑ってゐる
眼を細めてとほくに行ったり、塀の内側からひょこっと顔を出したり
なんだかみんな笑ってゐる
空は高く、雲はぽっかり
ぼくも、けふは気持ちがいいから
もう少しのこの陽だまりに居やうと思ふ
倉石智證
「彳亍」=たたずむこと。少し歩くこと。少し進むこと。
主には鳥たちの独特の歩き方を云うやうだ。
因みに槿は韓国の国花。