あんたがさうして、と云ふからさうしたんだが

なんだか、さっぱりだね

月は東に、といふが西でもいいわけだ

だるまさんは転んで

それなのになんだかしきりにだんまりしている

ちっとはその先の目安はついたの


富久の跡地には大きなクレーンが何台も休んでゐる

それもそのはずだ

もう夕方をとっくに過ぎているんだもの

それなのにロータリーをものすごい勢いで下ってゆく自転車の若者がゐる

あゝ、なんと危なっかしいことか

パトカーの赤色灯が通りの対面のコンビニのウインドウを照らし

僕もお巡りさんも

遠ざかってゆく若者の意識を

もう、つかまえられない

レイ・ブラッドベリではないが

都市が一瞬ありありと蒼褪める


過ぎて行くものよ

あゝ、ときに大きな傾きよ

クレーンの大仰な傾きでないにしろ

理解できないのは

あんたがたどこさ

それもそのはずだ

あんたがさうして、と云ふからさうしたんだが


月はどっちに出てゐる

クレーンのやたら長いアームが傾く

月は東に、であるにしろ

この耿耿と白く銀色に輝き出す何千平方㍍といふ敷地

ぼくは 通りすがりにいつも考えるのだが

多くの人々が同時に幸せになるには

本当に大きなお世話だが、心底どうしたらいいんだ

ものすごい勢いで自転車が車道を通り過ぎてゆく

昔あそこには、大賑はひのホテル本陣があったナ


倉石智證