「亭主の好きな赤烏帽子」

裏山から茗荷を採ってきてソーメンを茹でて食った

去年の今頃は出水だった

茗荷坊のてっ辺に白い花が咲いてゐた

早ければ栗が毬からころばり出る

青ぐるみが吹き散らかされ


ふもとの村の人が

山には入るなと云った

黄金色の稲穂に赤とんぼが群れをなし

少年が田圃を一生懸命に横切ってゆく


スリバンドクにお釈迦様は云ったさうだが

お前は自分の名前を忘れるかもしれないからと

でも、なめとこ山では熊たちが一心不乱に祈ってゐる

山に入ったのだが

そこのところがさっぱり思い出せない


倉石智證

(webより)

俗に「食べると物忘れがひどくなる」と言われているが

釈迦の故事に由来する。釈迦の弟子である周利槃特

(梵語:チューラパンタカの音写で、しゅりはんどく、スリバンドクなど)は

記憶力に乏しい人物で、自分の名前すら忘れてしまう。

そこで名荷(みょうが:名札の事)を首にかけさせたが、

名荷をかけたことさえも忘れてしまった。

そこで名荷と茗荷が同音である事から、このような俗信が生まれたとされる。