ツクツクホウシ、ツクツクホウシ
何か待たれる
何か壊れる
何か傾く
ギュイ、ギュイ、ギュイ
ツクツクホウシ
雲がものすごい勢いで湧き立ってゆく
なすすべもなく
オイヨー、オイヨー、オイヨー
田圃の畔伝いに
畑の縁へり
どうかすると神社の古い木々の傍らに
トンバウ等が用もないほどに生まれ
ヒャクニチソウに群れ飛ぶ
屋根の棟をこへて
あゝ、晩夏
あれほどまでに放縦だった夏もようやくに終わりを告げに来る
百日紅が僕の眼の中でおぼろに紅を滲ませ
畑の上を行く風が僕のすね毛に戦ぐ
オイヨー、オイヨー、オイヨー
ツクツクホウシ、ツクツクホウシ
何かが壊れ、何かが傾き、何かが生まれる
こんなにも佇ってゐる僕のまはりに
あゝ、こんなにも周り中にトンバウ等が湧いてくるとは
ぼくはもう、確かなものなんてなくて
鎌を投げ出して
人間がサミシクナルノダ
倉石智證
ときにツクツクホウシの鳴き声の洪水、
山鳩の鳴き声はのんびりしたものだが、
実りを迎え始めた田圃の稲穂の上や、
石垣、花々、畑地の崩れかけた畝のあたりにも、
シオカラトンボの群れが、まるで空のメダカのやうに群れ飛んでいる。