夏休みのこどもの背の
ますます黒くなってゆくことの
父はそんな子供のことを誇りに思ひ
風呂場で背中をごしごし洗ってやる
痛いと云ふことがどんなにか気持ちがいいことか
少年は自ら知ることになる
水に潜れば、水の泡の輪が幾重に頭頂をよぎり
尻辺に浮ぶ
ぽぽぽぽ、と泡がつながる
カジカはひっそりと水底の岩に隠れ
産卵色のウグイが虹色の横腹を眼の前で翻らす
水の流れや水のよどみがしわりしわりして
頭上の陽の光が水中に屈折して
水面の下の光の縞の
水中の岩や水底の石や
岸辺の水草を色づかせる
あゝ、至福のときが続く
ヤスを手に、岩底の鮠を狙うが
その天然の素早さにはとても叶わない
それでも少年は水から出て岩に登ると
濡れた肌へに水滴を滴らせたまま
手を高々と陽の光に突き上げ
とほくで呼ぶ父や母なるものに向かって
誇らしげに手を振るのだ
倉石智證