ごめんなさい
顔も手も洗って急いでやって来たんだ
病得て
窓際に座る
青いシートに
窓の桟に肘を突いて
痩せた鴉のやうに、世間をぎろぎろと眺め下ろす
緩やかなカーブが
坂に沿って家並みが続き
そして坂は消えてなくなる
行こうか
どこへ
何とかなるさ
フライパンがブルーの壁にかかる
花瓶が部屋に傾斜する
テーブルクロス
腐りゆくオレンジ
何もかもだ
モンパルナス
あゝ、丘の上の風車
全く用も為さない
ため息ばかりだ
瘋癲と放蕩と
世紀末とFemme fatale
エウロパは波に乗りあげる
苦い砂の不毛の味だ
エウロパの愛と死
無数の夢がシャボンのやうにきらきらと丘の上に飛んでゆく
誰か見かけただらうか
病得て、青いシートに座り
肘を窓の桟に突き
ファム・ファタール
けふも汝が訪ねて来ないかと待つ
倉石智證
1914アンリ・マティス「コリウールのフランス窓」
窓辺───
光と風の移ろいが、テーブルや水差し、金魚鉢、カーテン、
バルコニーや街路風景など内と外にさまざまな表情を与える。
コリウールは、地中海に面したスペイン国境に近い人口3千人ほどのフランスの漁村。
マティスは1905年の夏をここで過ごし、
自分の感情を表現するために自然から離れて
自由に色を使うフォーヴィスム(野獣派)の先駆けとなる作品を制作する。
