こんな日に、
ぼくは少しフザケテみた。
おほ方は猫を抱いて、四苦八苦
上へあがり、下へと進むうしろまへ
きみのまへに立ち、後ろより行く
それも、見はるかしたやうに
ぼくが新聞を読みはじめると
にゃあと背中に飛び乗って
すぐにごろごろと喉を鳴らしはじめる
背中にこの体重の一点が心地よく
ぼくはすっかりうしろをとられて
思ひがけず
新聞を取りこぼす
この紡錘の形の中に
すべてがある
カンダタは糸をとらへて
上へ上へといかうとするが
うへへうへへと下へ行くのだ
Cさんは馬に飛び乗り
勇みに勇み
前へ前へと,backする
Dさんのことはあまりよく知らないが
おほかたは愛の間違いで
腹、ふくるゝわざとなり
業とに、あざとい
大人とはさういふものよと
だまされもする
ようは、心地よいのだ
愛の、行ったり来たりが
おほ方は猫を抱いて、四苦八苦
そのやうに、可愛いけれどやっかいなのだ
生活のあらゆるところをひっ掻きまわす
あれは私の弱点をよく心得ていて
あゝ、またしても僕は後ろをとられた
なんとも、それも心地よい
軒端に蝉がチチチ、と鳴く
けふは8/9になる
長崎に鐘が鳴る・・・
猫は僕の背中の一点に
僕は新聞に目を凝らし
上へ行こうとすると、下へ進むことになり
右へ行くつもりが、いつの間にか左へということになり
前へ進もうとすると後ろへ進んでゐる
大いなるトレードオフ(二律背反)、
愛憎は二つに在って
オスプレイは大いなる矛盾を抱いて太平洋上を飛んで行った
前へ前へとバックする
猫は急激に僕の懐に大きくなって
ずっしりと
僕はもうその黒い塊りをいい加減、抱えきれないだらうと予感した
倉石智證