我、問、問
お盆ござれ
ば様は墓の草を抜く
茅の輪を潜り
また生きかへったやうだ
皺くちゃな手で
皺くちゃな顔で
歯ぬけて笑ふ
ば様は瓜や茄の畝の間や
里芋の葉裏にうずくまり
こう、こうと云ふ
里芋の葉のまろい透明な露を掬い
あこ、あことわたしを導き出す
あの子は逆縁で
最後におおきな我儘をしたさ
お盆ござれ
お盆ござれ
墓へ行く村の辻で
一瞬空気が艶めき、ざらりとゆらぐ
わたしたちは一様にたたらを踏み
こわばった手足のままであらぬ方を見やる
夜になる
お灯篭に火を入れる
蚊遣をさげてお線香を焚く
この煙、須臾の間や、
たんとおあがり
墓所の入り口にはこの村で亡くなった兵隊さんたちの墓標がかたまって立ち
暗がりに挙手をする
がたんごとん、がたんごとんと
とほく続く汽車のレールの音が聞こえる
お灯明を立てる
廻り行燈に赤や青や水色のさまざまな景色が浮かび
ここでも皆ひとしきり
ひっそりと昔話をする
我、問、問
お盆ござれ
こんな小さな村でも
みんな門に佇ち
こう、こうと、
みんな見えないものに向かって呼びかける
お盆ござれて、お盆ござれて
あゝ、死んでいった人たちにはとてもかなはない
廻り行燈がさまざまな景色を浮かべる
まわれまわれ
お供えした瓜や茄に足を作り
さうして、用が済んだあとは
村はずれの川に流してやる
肩先に
なにかひゐやりとしたものが下りて来て
突然秋が割り込んでくる
倉石智證