私のオドアケル───
あの秘密めいたまなざしはどうだ
踵をきュいとしめて
ぴょいびょいと飛んでゆく
頭は三角形にとんがり
体は緑色だ
妻を求めてゐるが、なり手がないので
少し焦ってゐる
ブリキの屋根の下で雨音を聞き
空を見上げて長嘆息
やれやれ、この雨の、はやくあがってくれないか
脇腹を掻いて
ドングリ眼で次に来る長い夜のことを考える
私のオドアケルのあの背中の緑色はなんだ
決して、長年の無精のせいではない
長靴を履いてふんぞり返って
少し、ええかっこしいをしてゐる
長靴はピッカピカなんだが
女の子たちはみんな素通りしてしまう
ある王国を与えられたのだが
どうもわたしは持てないらしいと
激しい恋をしたこともないし
歌を唄ってもへただし
時々調子ッパずれにもなり
みんなをひどくがっかりさせる
帝国は何処へいった
激しい撓る鞭は何処へ捨てやられた
三角形とか丸とか四角形が好きだ
どうも三角錐とか立方体とか球体は苦手だ
光が当たると影が出来る
すると、急に不安になり
自信をなくしてしまう
自分の三角っぽい緑色のことを忘れてしまう
それで、
どうかすると全部が影のできない平べったいものにならないかと
さう決断するとみんな次々と平べったくなっていってくれる
あらゆる影がすゥーとなくなって
長い夜がどっかへ明けていってしまった
私のオドアケル
けふは、おまへに相応しい
思索し、瞑想する
けふはおおきい葉っぱの下にゐて
誰かさんの場合なんか本のページの間にゐたりして
数行の
時に文字のやうにこんぐらがって起き上がり出したりする
球体や円形ではなく
そのやうなどこか円満なものではなく
どこか厳しい様相の矩形
葉切り蟻が次へと運ぶ葉のやうに
日の光りの中に、にぎやかに、さびしく
砂漠や、高い大地をゆく
目を開けていられないほどの花崗岩や岩塩の
それはそれほど白く眩しい平べったい方眼紙になって
そのやうになって初めて
わたしのオドアケルは白い方眼紙のうへを
ひゅい、ひゅいと、
踵をひきしめて飛んでゆくが
すべてのものが真っ白に平らになった眩しさのなかを
やっと己が黒い影をともなひ
ひらり、ふはりと方眼紙の上を
核分裂や原爆の炸裂
それこそ、一点の眩しさ
眼を開けていられないほどの、あゝ、眩暈が
わがオドアケルはそのころになると葉緑素が溶け落ち
自らが白熱する影さへ持たない存在となって
永遠の真昼に、
挑戦するのだ
倉石智證