ドンとなった花火は
虫送りのころ
古老を先頭にこどもたちが後に続き
菅笠の女たちも続く長さの
畦の長さに長々と
声を出して歩み行く
山の麓の
ドンとなった花火は空一杯に
土手を越えて
みんな両手を広げて何かを待つ
天と地が交雑し
そのなかにカルメラや綿菓子の甘い匂いや
ほかに懐かしい冷へた匂いも入り混じる
いまそこに
山の端や谷沿いに沸き起こりざわめきつつ扇状地を降りてくるもの
風のやうに一つ一つの戸口の方に
岸辺からも立ち上り
水面にのって
それから天へと泳ぎだす
ドンとなった花火はただそれだけで
人々に注意しろと促す
いろんなものが空気の裂け目からさアーッとやってくるから
男でも女でも
子供たちでもみんな
光の粒粒が空一杯に広がると
手を握りしめ、顎を引き
空一杯の故郷の花火を見上げる
倉石智證