ゆあーん、ゆよーん

みたいなものだ

いや、ローンサム

とっても心が揺れるが

もっと堅固なものだ


南の島のカメハメハ

波がちゃぷちゃぷ

いやそれよりもずっと長く生きた

ローンサム

風がへうへうと渡る

大海原を青く渡り

林の茂みに分け入って楽園まで

そこが誰知るともないサンクチュアリ


孤高の中にさらにひとり首を高く掲げ

ひとり歩く

だが実のところ、ローンサム

ジョージも実のところ自分が何者であるかはさっぱりわからない

歩みはのろく

くたびれないと云うこともないが

眼の端に少し涙を浮かべ

しかし、物乞いをすると云うほどの事もなかった


孤絶、ではなく孤高なのだ

もの思はないわけではないが

貪婪ではない

涎は垂らすがそれはいつものことだ

考えがあってではなく

考えたこともない

金輪際───

文字と意味を拾い集めたことはない

彼の思考は自分の歩みと同じくらいに堅固で

方向を持たないほど普通だ

すべて決めてあったことだったみたいに


ローンサム、おゝ、なんどでも

ローンサム、おゝ時間の中に朽ちてゆく

伴侶はどうした

愛についてはどう語ればよかったのだ

ディオゲネスのやうに少し汚れて自ら甲羅の中に憩み

ある阿呆のやうにけふもただ空を見上げる

中傷も誹謗も見栄も名誉すらなく

へうへうと時の風が吹き渡る

歩く姿はもう、四次元の世界に


ある朝か、昼のことでごさいました

行ってみるとジョージは

透明な光の中で

永遠の安らぎの中に

長い首をほんのわずかばかり水場のほうに投げやって

まったく後ろの方を振り向くこともなく

こと切れていたのでありました


倉石智證


「亭主の好きな赤烏帽子」

南米エクアドル領ガラパゴス諸島の国立公園は6/24日、

同諸島のピンタ島で唯一生き残ったガラパゴスゾウガメの亜種、

ピンタゾウガメの通称「ロンサム・ジョージ」が死んだと発表した。

推定年齢は100歳、体長が1メートル以上で、体重は90キログラムほどだった。

子孫を残そうと研究者らが努力したが、成功には結びつかなかった。

ロンサム・ジョージの死により、ピンタゾウガメは絶滅したとみられる。