近づくものを困らせる
途端目がけて横っ跳び
愛は盲目命がけ
恋はいなせやあぢさゐ色に
何がなんでも横っ跳び
トマトは胡瓜に恋をして
茄子はトマトに横恋慕
トマトは紅く恥ずかしく
茄子は瞋恚に色を染め
胡瓜しずしず知らぬ顔
顔ますますに長くなる
近づくものを困らせる
途端目がけて横っ跳び
愛は盲目命がけ
色さまざまに形まで
数の色だけ歯ブラシの
コップの中で押し合ひて
おくびに出さず身を寄せる
家族のやうに咲きついで
たれのたれのか分からない
近づくものを困らせる
途端目がけて横っ跳び
蛙、桂馬に飛び込めば
水に逆立つアメンボウ
空にけらけら紫陽花の
廻る傘などありゃしない
恋は盲目命がけ
肩に流れる黒髪の
贔屓目に見て美しい
あなたをちょいとお借りする
無断借用香に迫り
水無月十日しゃがみこむ
愛は盲目命懸け
傘、あじさゐにくるくると
露、しずしずと身に掛かる
茄子はトマトに横恋慕
バスルームにはハブラシの
途端目がけて横っ跳び
近づくものを困らせる
近づくものを困らせる
倉石智證
愛は口の中でやはらかくくずれ
あなたをちょいと無断借用
僕のミトコンドリアは愛情を持って食べられた
だから僕たちにはお母さんしかいない
雲をつかむやうな話だから
雲は部屋に漂ってゐる
それにに決まってゐる