はな、はと、まめはどこへえった

芍薬やけふもひとりと帯結び

つむじが吹いてなくなった


村のはずれに軽トラで

梅捥ぎにゆく

婆さまと

婆娘ばばこで笑ふ

梅、落ちる

ころころころと梅の尻

青き酸なとの青春の

巻きのスカート敷かれをり

あれ、寒くはと吾云へば

婆笑ひ出す

歯抜け顔


花、鳩、豆はどこえった

畝に顔出す絹さやの

さやさやすやとぷっくりと

豆の船なと莢の中

青く、青くとせがまれて

笊に採りましょ絹さやの

サラダ仕立ての夜になり

きょう日蝶々も出でずなり


はな、はと、まめはどこへえった

足が冷へるとば様は

足にアンカを引きよせて

胸に手を合わせ南無阿弥と

夜の行事を済ませども

さて、ゐ寝もせずまどろみて

土鳩声きく遠闇に

眼はぱっちりと天井に

じ様の鼾、100連発


はな、はと、まめはどこへえった

つむじが吹いてなくなった

花、鳩、豆はどこえった

鳩豆喰ふてめゝ赤き

鳩豆喰ふてめゝ赤き


倉石智證

「夕されば小倉の山に鳴く鹿は

こよひは鳴かず寐宿(いね)にけらしも」舒明天皇

(名詞「い(寝)」と動詞「ぬ(寝)」との複合語)寝る。眠る。


巻きスカートは妻が未だ二十歳前後のころのジーンズ仕立てのスカートだった。

気が付けば、梅捥ぐ下のシートになっていたわけだ。

梅がぽろぽろコロと、その上に転がる。

故郷ではこの季節、村のどこかしらから土鳩の啼く声が聞こえる。

で、で、ぽ、ぽー

でで、呆、呆ー

でで、法、法ー

ば様は眠っただらうか。