よされされ

雨は小止みに

夜はまだ暗い


ツバメよツバメ

どうぞわたしの唇を奪いに来ておくれ

その血のやうに赤い口唇と口唇とで


ツバメよツバメ

どうぞ咽がうち破れるほどに鳴いておくれ

母なき子らと子なき親らの

軒下の土くれの崩れ落ちるままに


ツバメよツバメ

どうぞわたしの眠っている間に

そっと行ってしまっておくれ

見覚えのあるお前の後ろ姿

遠田のかはづ、

田面の白い月影、

天の星がまねく


よされされ

雨は小止みに

夜はまだ暗い

ぼん、と鳴る柱の古時計

柱の下に

おまへの燕尾服がかかる


倉石智證