ルンビニで

摩耶夫人の脇の下から生まれて来たお釈迦様は

指で天を指さして「唯我独尊」と云った

成人になって苦しんで悟りをひらいた

木の下か、花の咲く中でか、丘の上かはしらないが

仏の教えを善き人たちに伝えた

初転法輪がなされた

転法輪はそれからゆうに2000年以上も

ずっと呟き続けている


転法輪はすとんとフクシマに落ちた

ころころ転がり出す

人んちの庭先でも

田でも畑でも

軒下でも

門から出て道へでも、

道だろうが山でも川でも

およそどこでも転がってゆくのだ


たたへよ、たたへよと手をすり合はす

たたへよ、たたへよと膝をいくへにも進める

風のない谷あいを探しにゆく

綱から離れた牛が草を食んでゐる


汗ばむほどなのにそんなところには誰も居ない

タイヤを襤褸を着た男が曳いて来る

悩めばそんなことは誰でも出来ると云ふ

八戸から入って海っぱたをずっと歩いてやって来た

途中海岸にタイヤが転がっていたんだ

見過ごすわけにもいかず

縄をつけて引っ張っぱることにした

誰がなんと云おうと髪は切らない

髭は剃らない

風呂は入らない

そんな風にしてずっと

誰がなんと云おうと、タイヤを引きずって来た


汗ばむほどなのに男の顔は見えない

鳥さへ啼いてゐるのに

男は何も答えない

ただ一生懸命転法輪を引っ張って来て

ただここに来て風か吹くこともなく

谷あいのやうで

空気は透明で

小鳥たちが鳴いてゐるが

人っ子一人居なくて

眼で見ても静かで

それがずっと続いてゐて


「ギリシャのカオス(混沌)」が市場を覆っている。

「リスクオフ(リスク資産の売り)」が次第に強まってきた。

「ルービニのつぶやき」が市場関係者間で飛び交っている。

米金融危機を予言し、“破滅博士”との異名を持つ

ニューヨーク大学のルービニ教授によるツイッター上の発言だ。

選挙直後から「ギリシャの結果はフランスよりずっと深刻だ」と発信するなど、

厳しい指摘を繰り返している。

つぶやきは8日も続いた。

「ギリシャが成長する唯一の選択肢は、

致命的な打撃を避けるよう支援を得ながら、ユーロから離脱することだ」。

シティグループは、今後12~18カ月で、ギリシャ離脱の可能性は「50~75%」

とリポートした。

(ニューヨーク=藤田和明12,5/9日経)


ルンビニだかルービニだか忘れた

唯我独尊であり転法輪は回り続ける

格言は格言で、5月のアノマリーは「売り抜けろ」

転法輪は何処へでも転がり続ける

しかし、いまやはたと転がり出す先を止めてしまった

男の顔は深い影の中にあって汗をかいてゐる

牛はウマゴヤシを食んでゐて

谷あいの空気は透明すぎて

ごっそりとセシウムが沈殿していて

蚯蚓もそれは知ってゐるが

もはや売り抜けることはできない

五月はほんたうに憂鬱なのだ

The brook murmurs over the pebbles

小川はさらさらと流れてゐる


倉石智證

ルービニ教授から「ルンビニ」を連想して、

初転法輪からフクシマを想像してしまった。

転法輪はつぶやき続けるが、

あそこの地は売り抜けられない。

ミミズには膨大なセシウムが蓄積しているらしい。

それを小鳥さんが食べて・・・