「亭主の好きな赤烏帽子」

青い書割

白い書割

神遊びす

天上スキー

鶯も鳴きい出す

わらわらと雪の上に散らばる

或いは列を組んでトレーンする


天上スキー

神遊びする

千のきらめき

万の歓声

ここまで来れば下界から離れて

自由になる

しまいには笑いっぱなしになる

うそだと思うなら


青い書割

白い書割

千の倉に雪解けの水が集まり

せせらぎが翡翠色のの泡を吹く急流となる

鶯が鳴きい出す

初燕がロープウェーを送り出す


天上駘風

涅槃西風

神楽三俣に遊べば

それは真から神遊びす

あちらが苗場山に

下に見えるのは和田小屋

生ビールが待っている

高速クワッドに乗って

どの娘の顔も笑いっぱなしになる

うそだと思うなら


うそだと思うなら、来てみるといい

青の書割、白の書割

青春が破裂してゐる

みんな放埓に雪の斜面をかけ下る

青の書割にポーン、ポーンと何か塊りのやうになって飛び出す

光りの雫が眩しい

濃い影をつくる

あゝ、スクリューして落ちてゆく


うそだと思うなら

あゝ、また笑ってゐる

えぐれた凸凹斜面を真っ黒い蛇のやうにモーグルって

細かい雪の飛沫を蹴散らす

眼下の人造湖は真っ青だ

まるでどの子もそこを目がけて飛び下りてゆく勢いだ

鶯が鳴き出だす

ゴーグルの端に陽の光りが反射し

あぎとに汗が滴る


青、白の書割

遠くに春雪をのせた峰々が浮き立つ春霞の中に銀に輝いてゐる

三俣神楽、神遊びす

天上スキー

鶯も鳴きい出す

ここまで来れば下界から離れて

下界から離れてほんたうに自由になる

ほんたうにしまいにはみんな笑いっぱなしになる

うそだと思うなら


「亭主の好きな赤烏帽子」

倉石智證

神楽三俣に春スキーをする。

聖五月に向かって、

山も笑へば、

あゝ、どの子の顔も、

笑ってゐる、

笑ってゐる。