小中学校の同級会である。

中学を卒業してから50年経った。

中一の時34歳だった担任の先生も今年で86歳になる。


マンサクはまず咲くていふお目こぼし

春が北信濃にも。

4/22(日)曇り。東京マンション発、9時少し回って。

お昼少し過ぎに地獄谷(長野県湯田中渋温泉より山間の細い道を車で、それから徒歩10分ほど)に着く。


毛づくろひ始めるころや地獄谷

湯船の端の岩の縁にのって毛づくろいをはじめたお猿さん。

湯の中ではうっとりと眼を閉じたお猿さんたちも。

遅い北国の春がなんとなくやって来ていさうな。


宿の下の川沿いの対岸からは高く間欠泉が白く吹き上げている。

その下を通るときは冷たい雨にうたれるような感じになる。

地獄谷からの帰りはそこを迂回して橋を渡り、宿の下に回りこんだ。

宿の石垣の下に水仙が咲いている。

四囲の景色はまだ冬ざれの寒々しい山肌。

水仙花咲ゐて地獄に仏かな

そこらあたりだけポッと明るんでゐる。

駐車場に戻り、寒いので車の中で妻の作ってくれたおにぎりをいただく。

魔法瓶のお茶もうまい。


天川荘は渋温泉の上のはずれになる。

ひなびた小ぶりなお宿であるが、料理は秀逸であった。

鰆の春キャベツ巻蕗味噌ソース、

鯛の道明寺蒸し、

海老真丈のお吸い物、

長薯のとろろ焼き、

蕎麦羊羹・・・。

最後まで飲んでいたのはわたし、一郎、昇。

昇はトイレに立ったがうまく立てない。

榮はへろへろになって部屋から出て来たが、壁伝いになって。

もう夜中の12時は回った。


微かな恩寵のやうな温泉であった。

夜中の漆黒の中に湯浴みするお風呂であった。

四角い浴槽にはただひとりのわたしであった。

肩まで深々と湯に浸かり、脚を伸び伸びとのす。

湯にしらしらとわが珍ポウがゆらゆらする。


いい湯加減てはないか。

滑らかでもあり、

どこか生真面目でもあり、

なにかとても寛容だ。


たれも居ない山間の漆黒の夜のお風呂であった。

微かな恩寵のやうな温泉であった。


倉石智證