TVのニュースも閉店になりザラリと画面が走り出す
カップヌードルをすすりながら
わたしの内なる何者かが「なにか足りない」と大声で叫ぶ
もっと、息をちょうだい
もっと激しく息を
牧神の午後への跳躍
空気がなければ生きてゆけない
空気だけでは生きてゆけない
空がなければ生きてゆけない
空があっても鳥が翔び、風が流れてなければ
ぼくは生きてゆけない
空は、青
空は、雲
空に、時々は雨
土がなければ生きてゆけない
土がなければ何か素っぽ抜けてしまふ
支えるものや踏んづけるものがなければ
心もとなく、漂ふばかりだ
土の下にはエーテルのやうに雲がかかっている
ぼくは静かに眼を瞑むり
ぼくのトルソーがそこにあるのを確認する
海がなければ
海がなければ生きてゆけない
海があっても波がなければなんだかつまんない
海に島が浮かび
鴎が翔ぶ
何千万といふお魚さんの大群が泳ぎ出す
海の底ゐの根方には動かぬシーラカンスが海の空を見上げ
鯨が北から南に、潮を吹く
さみしい時には山にゆく
さみしい時には山深くに
厳しい尾根に取り付く
思慮深くなるのだ
もっと真面目に見詰めやうかと思ふ
何十度もマイナスの氷壁をこつこつとの登ってゆくのだ
街をはずれ
山の頂や海に出やう
運がよければ、を歌おう
腕をこんな風にして横にステップし
腕を膝に互い違いに前へよろける
運がよければ
運が良ければだが
恋の二つや三つ
運が良ければだが
うまい酒にもありつける
コインの裏表
愛が成就すればそれで、もう少しだ
最後の最後の時が来て
もう、空気もいらないとなったら
神様がさっと下りてきて
わたしを心底抱きとってくれる
torso
僕の透明な径で、ぼくの糞ころがしに挨拶をする
きっと分かってゐてくれるだらうと思ふ
倉石智證
ぼくなんかまあ仕合わせな方だ。
少なくともまだ死を想像できる。
自分の死を想像する間もなく足をさらわれて行ってしまった
多くの人たちのことである。
水ばかりではなく、泥や砂や油が気道や肺に詰まる。
とても、息が出来ない。
いまでも身の置き所なくどこかでうずくまってゐるのかもしれない。