歌を聞いては静かに涙を流す
祈りを見ては静かに涙を流す
涙を流す人を見ては静かに涙を流す
そうでなければ
すべてを洗い流した海辺の村を
赤い錆びた鉄路がカーブして
仮設住宅で赤ん坊が泣いた
一歩一歩前へと云ふ
一歩一歩前へと云ふ
でも、電車は留まったままなんだ
赤い夕陽に照らされて
うから、はらからはは野末の石の下に
土の中まで寒さが沁み入る
散歩がてらに郵便ポストに行きかけたが
すぐに引き返す
出す当てもなくなった手紙をいまさらどうしやうといふのか
悲しみの諸相は
涙の諸相
今では浜辺に静かに打ち寄せる波の調べ
本当に静かな
心を慰める
喪に服せ
喪に服せ
せめて今年いっぱいは
そうでなければ
おおこのレクイエム
壮大なレクイエムの下
アベ・マリアといふ
調べの
顔を覆ひて静かに
涙を流す
新しき年のために
新しき年のために
倉石智證